9月のイギリス旅行 (1)38時間2016/10/07

 9月後半にロンドン、リヴァプール、湖水地方とエディンバラへ出かけた。どの街も行きたい/見たい場所ばかりでせっせと歩き回った上に、タイ航空利用だったためいつも以上の強行軍弾丸旅行になった。バンコクを経由したのは、駐在中の娘を帰りに訪ねたから。機中2泊含めての10泊11日は、長かったようで案外短かい。忘れないうちに記録をつけなくちゃ。

 午後5時半に成田を発ってから、最初に宿泊するリヴァプール到着まで一体何時間かかるのか。事前に計算すると怖気づいてしまうのできちんと考えなかったが、ざっと38時間!だった。すごいですね。
成田ーバンコク飛行時間が6時間半、乗り継ぎ3時間後、11時間飛びロンドンのヒースロー空港に朝7時過ぎに到着した。この日の夕方、直行便で羽田から来る友人U(去年のチェンマイ旅行メンバー、英語に強いと待ち合わせ、一緒に列車でリヴァプールまで行ってしまうのだ。
 入国審査に1時間余り。Heathrow Expressで空港からパディントン駅へ移動し、予約済みの荷物預かり所にスーツケースをお願いして、駅前から赤い2階建バスに乗った。さあ、初日の観光開始。ナショナル・ギャラリー、大英博物館、大英図書館(いずれも無料)で、待ち合わせまでの6時間余りを過ごす予定だ。覚悟の上だが、すでに眠い。
 
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9月のイギリス旅行 (2)博物館巡りなど2016/10/08

 役に立つかもしれないので、情報も載せておこう。ごく一般的な内容だが。
ロンドン市内の移動にはオイスターカードを事前に購入した。移動の参考にしたのは主要バスマップ
また、ロンドンからの列車移動にはBritrail pass(1等)を使った。National Railサイトなどを通して、事前購入なら区間別の切符を安く入手できることもわかったが、同行者Uから「1等passがあれば、満席の心配をせず好きな電車に乗れるんじゃない?」と提案があった。なるほど、さすが。
Virgin Train1等は軽食と飲み物(アルコール類も含む)が無料でサービスされ、座り心地よく快適だった。Heathrow Expressにも乗れるのも便利だ。

 さて、初日の続き。
予定を立てている時には、ゆっくり歩く静かな博物館をイメージしていた。多分疲れているだろうが、この際じっくりと展示物を見るはずだった。ところが現実の館内は、日本の美術展ほどではないにせよ、大勢の人々、先生に連れられた学生グループやガイドに先導されるアジア人観光客グループなどで溢れている。ぐわんぐわんと響く靴音、人の声。ナショナル・ギャラリーで1時間半、大英博物館で2時間、、もう気力が続かない。ナイト・ミュージアム3の素敵なランスロットはいないし、サットン・フーから日本美術(横尾氏あります)を回ったところで遅めの昼食を取り、大英図書館へ移動することにした。
 
 大英図書館で見られる無料展示室 Treasures of the British Library は素晴らしい。ダヴィンチの手書き原稿、バッハ、モーツァルトの手書き楽譜に驚き、ベオウルフ、ジェイン・オースティン、そしてビートルズの歌詞原稿に気持ちが和らいだ。
この図書館はデジタル・アーカイブ化が進み、今では100万点以上の画像が検索できる、って何てすごいことなんだろう。一例:マグナ・カルタの資料
 気分を持ち直し、地下鉄に乗った。Uとの待ち合わせはパディントン駅のスタバ。
WiFiが使えるので選んだ場所だ。

9月のイギリス旅行 (3)リヴァプール2016/10/10

 午後6時過ぎ、予定通りスタバに現れたUとタクシーでユーストン駅へ急ぎ、7時過ぎのリヴァプール行きに飛び乗りホッとしたのも束の間、聞き取れないイギリス英語の理解できない理由により出発は1時間遅れだった。8時発のもあるのにどうするの?と乗務員に質問したら"We go together."と答えが返ってきた。へえ〜。
11時過ぎにリヴァプール・ライム駅到着。タクシーでようやくホテルに着いたが、ツインのはずの部屋がダブルで部屋替えを申し入れ、フロントから遠く離れた迷路の向こうにある薄暗いけどインテリアはポップな部屋に落ち着き、長い長い一日が終わった。

 とは言っても、ぼやいてはいられません。疲れを知らない旅行人格。こんなに楽しいことがあるんだから。
 晴天の2日目、まずはマージー川沿いのウォーター・フロントを散歩した。
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そしてThe Beatles Story 物館へ。
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世界遺産のアルバートドッグ 散策後はマジカルミステリー・ツアーのバスに乗る。
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するとこんな場所へ連れて行ってくれるのだ。ここはペニーレーン
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ストロベリー・フィールズ
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ジョンがミミおばさんと暮らした家
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ポールが幸福な少年時代を過ごした家
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 もちろんジョージやリンゴの家も、それぞれが通った学校、教会なども回る。ツアーバスは世界中から来た人々で満員で、みんな熱心に解説を聞き、流れる曲に合わせて歌っていた。メンバーが生まれ育った場所を訪ねると、"In My Life"の歌詞が改めて胸に染みる。
 解散は市内中心部。レコードデビュー前の4人が演奏していたマシューストリートのキャバン・クラブ近くでバスを降りた。近くにはジョンの銅像、エリナー・リグビーの像もある。all the lonely people...
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 Saturday with the Beatles も予約しておいた。でも、正直に書くと、このバンドは全くダメ。8:00pmスタートのはずが9時過ぎに始まった上に、呆れるほど下手くそだった。前座のほうがよかったよね、と言い合いながら5曲で退散した。
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9月のイギリス旅行 (4)湖水地方2016/10/10

 当初はリヴァプールからエディンバラへ直行するつもりだった。が、旅慣れたUが湖水地方にも立ち寄れるはずと主張する。調べてみると、本当だ、ちょうどよい電車もツアーもある。Mountain Goat Toursのビアトリクス・ポター・ツアーに申し込んだ。

 3日目の朝、リヴァプール駅の掲示板でプラットホームを確認し、駅構内で簡単な朝食を取り、ローカル電車に乗った。
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途中駅で1等車両のある列車に乗り換え、
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曇ったり晴れたり霧が出たり、目まぐるしく変わる天気を気にしながら、
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11時過ぎ、ウィンダミア駅に到着。坂道を下るとすぐインフォメーション・センターがあり、荷物を預けた(予約済み)。ここへツアーバスが迎えに来てくれる。
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 村を小一時間歩いてから、ツアーバス(小さなバン)に乗り込んだ。参加者は他にイギリス人カップル1組だけ。あとでわかったが、湖水地方のうねうね続く細い道路は観光バスでは通れない。
 ポターが16歳の時、家族で初めて避暑に訪れたレイ・キャスル。ダウントン・アビーのような貴族の館ではなく、リヴァプールの裕福な医師が建てた。
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曇りだが、丘の上から眺める湖が美しい。
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 4時間半のツアー中最大の見所は、ビアトリクス・ポターの家ヒルトップ。毎日大勢のピーター・ラビット・ファンが訪れる。「ナショナル・トラストで最も人気のある場所だ」とガイドのマークが説明してくれた。周囲の農場4000エーカーポターが購入し、遺言でナショナル・トラストに寄付された。実際に住んだ家は道の反対側にある。
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「おかあさんは、むすめのモペットとミトンには、ひらひらえりをつけたよそゆきのエプロンをきせました。それから、たんすのひきだしをあけ、うつくしい、きゅうくつなふくをたくさんだして、むすこのトムにきせようとしました。」
(こねこのトムのおはなし いしいももこ訳 福音館書店)
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 3年前に亡くなった親しい友人はピーター・ラビットの大ファンで、いつか湖水地方に行きたいと言っていた。ポターの住んだ場所を歩きながら、心の中でLに何度も話しかけた。
 ビアトリクス・ポターの気持ちに近づくことができるような記念碑もあった。婚約後一ヶ月で亡くなってしまった編集者ノーマン・ウォーンのために建てた石碑だ。映画『ミス・ポター』では、ユアン・マクレガーがこの心優しい婚約者役を演じている。「幸せな日々を偲んで」と彫られた石碑は木々とシダに囲まれ、ひっそりしていた。
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 ところで、湖水地方を印象深いものにしたのは、風景だけではなくツアーの人々の親切だった。インフォメーション・センターの女性がわたしたちの乗るエディンバラ行き列車の出発時間に合わせて、荷物をロッカーから運んでおいてくれたばかりでなく、ガイドのマークはそれをバンに乗せて駅まで送ってくれたのだ。ツアー終了は4時半、わたしたちだけでは15分後の電車にとうてい間に合わなかっただろう。
 話が戻るが、ツアー最後はウィンダミア湖のクルーズ。対岸ではマークおじさんが時計を見ながらわたしたちを待っていてくれた。
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9月のイギリス旅行 (5)エディンバラ2016/10/10

 エディンバラはいつか訪れたい町の一つだった。行ってみれば長い間の期待をはるかに超える素敵な町で、せっせと歩いた距離は(今チェック)2日間で25km、多分新記録だろう。

 4日目の朝、市中心部のプリンスィズ通りにあるホテルから、エディンバラ城へ坂を上ってゆく。ニュータウンもよい。オールドタウンもよい。通りも建物も趣きがあり素晴らしい。どこも観光客でにぎやかだが、何か落ち着いた空気が漂っている。
エディンバラ城入り口
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城壁内側からの眺め
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毎日午後1時に空砲が撃たれるワン・オクロック砲
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ロイヤルマイルにはもちろんバグパイプの響きが
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それから、必ず足を伸ばしたいこのコーヒーハウス。ハリー・ポッター・ファンが列を作り、J.K.ローリングの席に座るのは大変だろう。通り過ぎる二人。
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王族が時折休暇を過ごすというホリールード宮殿を、韓国からの修学旅行生がにぎやかに歩いてゆく。わたしたちはここでアフタヌーンティーをいただきました。
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それからロイヤルマイルを戻って以前教えた学生Davidと会い、町で一番小さなパブに連れて行ってもらった。話をしながらビールを飲み、気になっていた伝統の食べ物ハギスを食べる。
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 5日目は、もう歩きたくないUの提案でバス1日券を購入。でもカールトンヒルに行くにはやっぱり歩かなくちゃ。ネルソン記念塔にも登らなくちゃ。
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そして、スコットランド国立博物館と美術館内部もひたすら歩き回り、独立の士ウィリアム・ウォレス(お話がかっこよ過ぎる『ブレイブ・ハート』)やロバート一世、ケルト文化、ジェームズ・ワット、ウィリアム・モリス、クローン羊ドリー、ヘンリー・レイバーンのスケートをする牧師、ラファエロ、エルグレコ、ゴヤ、ゴーギャンを見て、外に出ればエディンバラの町はやっぱり美しいのだった。
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この日の夕方列車に乗ってロンドンに戻り(所要時間は4時間)、キングズクロス駅9と3/4プラットホームで記念撮影をした。マフラーはもちろんグリフィンドールね。

9月のイギリス旅行 (6)ロンドン最終日2016/10/15

 最終日は夕方まで、それぞれ自由にロンドン市内を歩くことにした。キングズクロス駅から徒歩2分の小さなホテルは部屋も小さくスーツケースを開けるスペースさえなかったが、観光に便利でよかった。半地下で出されるフル・イングリッシュ・ブレックファストも。
 相棒Uはバッキンガム宮殿へ向かう。わたしはセントポール大聖堂まで地下鉄で行き、(ハリポタで破壊された)ミレニアム橋を渡って、テート・モダンへ歩いた。
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これを見るために
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 ロンドンの美術館/博物館はテート・モダンを含め大半が無料だが、こうした企画展には10数ポンドの入場料が必要だ。また当然ながら、常設展と違って写真撮影はできない。
 この回顧展は、ジョージア・オキーフが写真家アルフレッド・スティーグリッツと出会い、ニューヨークの画廊291に画家として初めて作品を発表した1916年からちょうど100年を記念するものだった。オキーフの一世紀。
 ニューヨーク時代、抽象画への傾倒、ジョージ湖、花と静物、ニューメキシコ、年代別に並べられた作品群が、オキーフという類稀な人物を物語る。ゴーストランチから見えるペダーナル山についての冗談めいた発言「これはわたしの山です。十分に山を描き切れたらわたしのものになる、と神様が言ったのです」
 元は発電所だったテート・モダンは広々と機能的に改築され、鉄骨やステンレスがいかにも21世紀だ。常設展に並ぶ傑作モダン・アートの数々も見逃せない。マーク・ロスコの部屋もよかった(もう一組の壁画を、千葉県の川村記念美術館で静かに見ることができる)。歩き疲れて外に出ると、テムズ川沿いの広場でエド・シーラン風のシンガーソングランターが歌っていた。

 そのまま川沿いを西へ。シェイクスピア・グローブ座前では、即興詩人が詩を売っている。注文者を詠った詩をタイプライターで打ち込むらしい。文化ですねえ。感心しながら歩いていると、こちらの顔をしげしげ見ながら急接近してくる人がいる。えっ何?「S先生でしょ」
うわあ、びっくり。元同僚のTさんでした。サングラスかけてたのによくわかったね。Tさんは一人でミュージカル三昧のロンドン旅行なんだそうな。不思議な偶然を証拠写真に撮り、西と東に別れた。
 そしてバラ・マーケットBorough Market
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 それから、2016年現在無料で登れる新しいタワー Sky Gardenから、ロンドン塔とタワーブリッジを見下ろす。ビッグベンも見えるけど、ちょっと遠い。
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 Uとは夕方、コベントガーデン駅横のMarks&Spencerで待ち合わせた。
一緒に夕食を取り、今回最後のお楽しみ、キャロル・キングのミュージカル "Beautiful"を見た。"Tapestry"に至るまでのキャロル・キング、ジェイムス・テイラーやジョニ・ミチェルに会う前の若いキャロルの物語が胸を打つ。長い間聴いてきたひとつひとつの意味が、今ようやくわかったような気がする。
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本を買う借りる読む、映画を見る2016/10/25

 IMDbで予告を見て気になっていた映画"Genius"『ベストセラー、編集者パーキンズに捧ぐ』(邦題長い)が、いつの間にか日比谷のシャンテで始まっている。あら、大変。急いでAmazonに飛び、原作の翻訳もの草思社文庫2冊を注文した。本を読んでから映画に行くとなると、シャンテは終わってしまうけど、11月にイクスピアリで見られそうだ。

 映画と言えば、旅行後の宿題ロン・ハワードの"Eight Days A Week"を見に行き、それから『ハドソン川』と『ジェイソン・ボーン』にも行った。"Genius"はヘミングウェイ、フィッツジェラルドも絡むので必見。アメリカ文学関連ではエミリー・ディキンソンの伝記映画"A Quiet Passion"もあるが、地味すぎて日本公開されないかもしれない。そう言えば、これも地味なアリス・マンロー原作"Hateship, Loveship"はDVD発売されたのかなあ。

 図書館から回ってきた『下町ロケット2』は面白くて週末に一気読み3時間。待ち人数多数のため、すぐ返却した。池井戸さんは読後感が爽快。その10分の1ほどのページ数『サックス先生、最後の言葉』も同時に借り2回読み返した。まだ返さない。多分もう数回読む。スピードに乗って楽しむ本と、じっくり噛みしめたい本があるよね。机の上にはアンセル・アダムス写真集、久しぶりの筒井康隆氏、最近読み始めた堀江敏幸さんも載っている。
見ては忘れ、読んでは忘れ、今年も秋が深まっていく。