バンコクとホアヒン2016/12/26


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 1年前のチェンマイ旅行を近所の仲間と相談していた頃、かの国にこんな縁ができるとは思っていなかった。2月から娘が住み始め、1年で3度目のタイ訪問。今回は子供の暮らしぶりが見たいという夫と一緒に、バンコクとホアヒン各2泊ずつの旅行だった。
 すっかりバンコク生活に馴染んだ娘は、週末のチャトチャク・マーケット、リバークルーズ、アジアティックなどに案内してくれた。わたしたちも気楽に地下鉄を乗り継ぎ、繁華街のモールへ出かけた。
 写真はバンコクから南へ200kmほど離れたホアヒンのリゾート。物価の安いタイだからこその初5つ星ホテルは、本当に美しい所だった。朝は庭で行われるヨガに参加し、片足で立てずヨロヨロ。昼間はプールサイドで本を読んだり泳いだりし、日が落ちるとトゥクトゥクでナイトマーケットに出かけた。その夜市では今年初めに爆破事件も起きたが、特に目立つ警察官の姿はなかったようだ。娘が言う通りマイペンライ」の国なのか。
 10月の国王死去により、国全体は1年の服喪期間にある。大きな黒い遺影があちこちに貼られ、街角に置かれた数多くの祭壇で早朝から一心にお祈りをする若い人々/若くない人々を見かけた。温和で寛大で一見あっさりした国民性の奥にあるものが、これから少しずつ見えてくるかしら。娘が滞在している間に、きっともう何回か出かけることになるだろう。お料理も美味しいしね。

誰が歌うのか2016/12/14

 BBCサイトに、ドナルド・トランプの大統領就任式で歌うアーティストが見つからず困っているというニュースがあった。
それはそうでしょ。ほとんどのポップスターたちはヒラリー支持だった。「歌う人なんているわけない」というジョン・レジェンド、歌う予定と報道されて「全くありえない」とコメントしたエルトン・ジョンの話などが載っていた。

 先日のマドンナの発言は率直でよかった。しばらくの間、わたしも何か悪い夢を見ているんじゃないかと思ったものだ。

 でも嘆く必要はないのだろう。アメリカには有能で明朗で見識の広い女性たちが数多くいるというニュースもあった。13人の一人に挙げられた民主党 Elizabeth Warren の選挙後のスピーチは、本当に力強く印象的だ。

 ところで、今年のケネディ・センター名誉賞の一人に、ジェームス・テイラーが選ばれている。オバマ氏最後の授賞式は間違いなく素敵なものになるだろう。
去年の授賞式でキャロル・キングの Natural Woman を歌うアレサ・フランクリンは、ただもう圧巻だった。ミュージカル "Beautiful" の場面から始まるこの YouTube 画像、もしまだでしたら、ぜひご覧ください。人は共感しあえる人々のために歌うのだ、もちろん。

一年が早い!12月のメモ2016/12/11

 『ベストセラー、編集者パーキンズに捧ぐ』は少し前の週末、シネマ・イクスピアリでの初日レイトショーに、日本語音声指導講習会の後駆けつけた。総観客数が(わたしを含めて)驚きの5人!何しろ開始7分前にたった一人しかいなかったのだ。
という具合で、話題にならない地味な映画だったが楽しかった。コリン・ファースは本当のマックス・パーキンズ同様、ずっと帽子をかぶり続け、ジュード・ロウのトマス・ウルフは立ったまま、冷蔵庫を机がわりにして原稿を書きなぐっていた。書き捨てていたのではなく、読み返すことなく木箱3つ分の原稿を書き続けたという。実際には身長2メートルの大男だったらしいから、執筆姿はさぞ迫力があっただろう。
 実は原作の翻訳を、まだあまり読み進んでいない。パーキンズに見い出されたフィッツジェラルドが処女作『楽園のこちら側』を出版し、ゼルダ・セイヤーと結婚した辺りまでだ。映画のストーリーが始まる前ということか。いや、本はとても面白いのだ。冬休みに入ったら、残りをきちんと読むつもりでいる。映画のこのシーン(ヘミングウェイ役それほど似ていない。ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』のほうがよかった)が語られるのは、きっと下巻だろう。

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 キーウエストにヘミングウェイを訪ねたパーキンズ 1935年(帽子は手に持っている)実際の写真

 秋学期はK校が上級文法クラスと漢字N2クラス、Y校では初中級を2クラス教えていた。ここ一ヶ月行き帰りの電車でボブ・ディランを聴き続け、自伝(クロニクルズ1)と新書の解説本を読んだ。人がみな孤独で投げやりで自分にかまけ愛は虚しく通り過ぎ行き場のない思いが風に舞っているディラン的世界のその向こうに、決して聞き逃してはならないメッセージがあることを知ったように思う。
 昨晩のノーベル賞授賞式でのパティ・スミスを、ついさっき見ることができた。緊張して歌い直したからこそ、むしろパティのありのままの震えるような感動が伝わって、こちらもぐらぐらと揺り動かされた。

世間が面白くない時は勉強2016/11/12

 孫引きだが、ドイツ語学者関口在男さんの『独逸語大講座』昭和3年(1931)最終巻に「世間が面白くない時は勉強にかぎる」という言葉があるそうだ。(半歩遅れの読書術、國府功一郎、日経新聞10月16日)
妙に納得し、Evernoteに入れておいた。

 予想外の結果に終わった米大統領選に、普段はつかないため息が止まらない。よその国のことにせよ、長年のヒラリー・ファンにはショックだった。頭脳明晰で比類ない経験を持つ女性、面白みに欠けるかもしれないが、公平で度量の大きなヒューマニストだと思う。そういう女性が次に登場するまでに何年かかるのだろう。
時代の流れが変わりつつある。ポピュリズムの波がイギリスから大きくうねってアメリカに到達した。大らかで寛容だったオバマ大統領の時代が終わる。

 世間が面白くない。だから勉強だ。
こんな時引っ張り出す英語の語彙練習帳には、過去数回の中断の跡がくっきり残っている。今年こそ年末までに終わらせよう(と毎回思うんだけど)。
 そして気持ちを引き立てるため、丁寧に家のことをしてみる。種を蒔いたばかりの冬のベランダ菜園に水をやり、パンを焼き、煮りんごを作った。晩秋のいい匂い。
あ、そうそう、不気味なパンダ顔になるコーヒー・デトックス・パックも。
夕方、図書館から『ボブ・ディラン自伝』到着のお知らせメールが入った。

本を買う借りる読む、映画を見る2016/10/25

 IMDbで予告を見て気になっていた映画"Genius"『ベストセラー、編集者パーキンズに捧ぐ』(邦題長い)が、いつの間にか日比谷のシャンテで始まっている。あら、大変。急いでAmazonに飛び、原作の翻訳もの草思社文庫2冊を注文した。本を読んでから映画に行くとなると、シャンテは終わってしまうけど、11月にイクスピアリで見られそうだ。

 映画と言えば、旅行後の宿題ロン・ハワードの"Eight Days A Week"を見に行き、それから『ハドソン川』と『ジェイソン・ボーン』にも行った。"Genius"はヘミングウェイ、フィッツジェラルドも絡むので必見。アメリカ文学関連ではエミリー・ディキンソンの伝記映画"A Quiet Passion"もあるが、地味すぎて日本公開されないかもしれない。そう言えば、これも地味なアリス・マンロー原作"Hateship, Loveship"はDVD発売されたのかなあ。

 図書館から回ってきた『下町ロケット2』は面白くて週末に一気読み3時間。待ち人数多数のため、すぐ返却した。池井戸さんは読後感が爽快。その10分の1ほどのページ数『サックス先生、最後の言葉』も同時に借り2回読み返した。まだ返さない。多分もう数回読む。スピードに乗って楽しむ本と、じっくり噛みしめたい本があるよね。机の上にはアンセル・アダムス写真集、久しぶりの筒井康隆氏、最近読み始めた堀江敏幸さんも載っている。
見ては忘れ、読んでは忘れ、今年も秋が深まっていく。

9月のイギリス旅行 (6)ロンドン最終日2016/10/15

 最終日は夕方まで、それぞれ自由にロンドン市内を歩くことにした。キングズクロス駅から徒歩2分の小さなホテルは部屋も小さくスーツケースを開けるスペースさえなかったが、観光に便利でよかった。半地下で出されるフル・イングリッシュ・ブレックファストも。
 相棒Uはバッキンガム宮殿へ向かう。わたしはセントポール大聖堂まで地下鉄で行き、(ハリポタで破壊された)ミレニアム橋を渡って、テート・モダンへ歩いた。
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これを見るために
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 ロンドンの美術館/博物館はテート・モダンを含め大半が無料だが、こうした企画展には10数ポンドの入場料が必要だ。また当然ながら、常設展と違って写真撮影はできない。
 この回顧展は、ジョージア・オキーフが写真家アルフレッド・スティーグリッツと出会い、ニューヨークの画廊291に画家として初めて作品を発表した1916年からちょうど100年を記念するものだった。オキーフの一世紀。
 ニューヨーク時代、抽象画への傾倒、ジョージ湖、花と静物、ニューメキシコ、年代別に並べられた作品群が、オキーフという類稀な人物を物語る。ゴーストランチから見えるペダーナル山についての冗談めいた発言「これはわたしの山です。十分に山を描き切れたらわたしのものになる、と神様が言ったのです」
 元は発電所だったテート・モダンは広々と機能的に改築され、鉄骨やステンレスがいかにも21世紀だ。常設展に並ぶ傑作モダン・アートの数々も見逃せない。マーク・ロスコの部屋もよかった(もう一組の壁画を、千葉県の川村記念美術館で静かに見ることができる)。歩き疲れて外に出ると、テムズ川沿いの広場でエド・シーラン風のシンガーソングランターが歌っていた。

 そのまま川沿いを西へ。シェイクスピア・グローブ座前では、即興詩人が詩を売っている。注文者を詠った詩をタイプライターで打ち込むらしい。文化ですねえ。感心しながら歩いていると、こちらの顔をしげしげ見ながら急接近してくる人がいる。えっ何?「S先生でしょ」
うわあ、びっくり。元同僚のTさんでした。サングラスかけてたのによくわかったね。Tさんは一人でミュージカル三昧のロンドン旅行なんだそうな。不思議な偶然を証拠写真に撮り、西と東に別れた。
 そしてバラ・マーケットBorough Market
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 それから、2016年現在無料で登れる新しいタワー Sky Gardenから、ロンドン塔とタワーブリッジを見下ろす。ビッグベンも見えるけど、ちょっと遠い。
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 Uとは夕方、コベントガーデン駅横のMarks&Spencerで待ち合わせた。
一緒に夕食を取り、今回最後のお楽しみ、キャロル・キングのミュージカル "Beautiful"を見た。"Tapestry"に至るまでのキャロル・キング、ジェイムス・テイラーやジョニ・ミチェルに会う前の若いキャロルの物語が胸を打つ。長い間聴いてきたひとつひとつの意味が、今ようやくわかったような気がする。
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9月のイギリス旅行 (5)エディンバラ2016/10/10

 エディンバラはいつか訪れたい町の一つだった。行ってみれば長い間の期待をはるかに超える素敵な町で、せっせと歩いた距離は(今チェック)2日間で25km、多分新記録だろう。

 4日目の朝、市中心部のプリンスィズ通りにあるホテルから、エディンバラ城へ坂を上ってゆく。ニュータウンもよい。オールドタウンもよい。通りも建物も趣きがあり素晴らしい。どこも観光客でにぎやかだが、何か落ち着いた空気が漂っている。
エディンバラ城入り口
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城壁内側からの眺め
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毎日午後1時に空砲が撃たれるワン・オクロック砲
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ロイヤルマイルにはもちろんバグパイプの響きが
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それから、必ず足を伸ばしたいこのコーヒーハウス。ハリー・ポッター・ファンが列を作り、J.K.ローリングの席に座るのは大変だろう。通り過ぎる二人。
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王族が時折休暇を過ごすというホリールード宮殿を、韓国からの修学旅行生がにぎやかに歩いてゆく。わたしたちはここでアフタヌーンティーをいただきました。
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それからロイヤルマイルを戻って以前教えた学生Davidと会い、町で一番小さなパブに連れて行ってもらった。話をしながらビールを飲み、気になっていた伝統の食べ物ハギスを食べる。
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 5日目は、もう歩きたくないUの提案でバス1日券を購入。でもカールトンヒルに行くにはやっぱり歩かなくちゃ。ネルソン記念塔にも登らなくちゃ。
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そして、スコットランド国立博物館と美術館内部もひたすら歩き回り、独立の士ウィリアム・ウォレス(お話がかっこよ過ぎる『ブレイブ・ハート』)やロバート一世、ケルト文化、ジェームズ・ワット、ウィリアム・モリス、クローン羊ドリー、ヘンリー・レイバーンのスケートをする牧師、ラファエロ、エルグレコ、ゴヤ、ゴーギャンを見て、外に出ればエディンバラの町はやっぱり美しいのだった。
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この日の夕方列車に乗ってロンドンに戻り(所要時間は4時間)、キングズクロス駅9と3/4プラットホームで記念撮影をした。マフラーはもちろんグリフィンドールね。