ケンブリッジ・クインテット2006/07/27

 
 図書館から借りた本を読み終わると、表紙の5人がそれぞれの言葉で語りかけてくるような気がした。刺激的な実験小説だ。注文しなくちゃ、とamazonへ行ったら絶版だったけど。

 「その後」に書かれていた1997年のチェスチャンピオン・カスパロフ対IBMコンピュータ・ディープブルー対局にあることを思い出し、本棚の奥を探した。引っ張り出したのは「チェス人形タークの生涯」(A History of Chess by Jerzy Gizyckiから) のコピーだ。
 1760年頃オーストリアの女帝マリア・テレサの命により作られたチェスをする自動人形タークは、実のところまやかしではあったが、ナポレオンを敗り、E.A.ポーの短編のテーマになり、1920年代には映画も作られたとある。

 「ケンブリッジ・クインテット」の設定は1949年だ。実際にコンピュータが進化し、人間と能力を競い合うまでには40年近くかかったということか。
この辺り、ネット上ではディープブルーの解説しか見つからなかったが、手元には1978年にボビー・フィッシャーがMITのグリーンプラットというチェス・マシーンに3勝したという資料もある。

 機械は人間の知性を超えるか、という命題はいつでも魅力的だ。物理学者、数学者、遺伝学者、哲学者の議論に心底引き込まれた。

 ところで、作者はヴィトゲンシュタインが好きじゃないんでしょうか。かなり損な役回りでしたね。