秋の中欧旅行④クラクフとアウシュヴィッツ2023/11/05

 プラハから私鉄特急 Leo Express に乗って、ポーランドのクラクフに到着した。所要時間はおよそ7時間、到着は夜の10時半過ぎだ

 翌月曜日、アウシュヴィッツ=ビルケナウの現地ツアーに参加した。クラクフ市内から送迎マイクロバスで約1時間、オシフィエンチム市郊外のアウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館に着く。ガイドが自己紹介をし、30数名の参加者に入場券とヘッドホンを配った。様々な言語グループのガイド付きツアーが、間隔を置いて組まれているようだ。

 アウシュヴィッツ第一強制収容所の入り口
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働けば自由になる」 という意味だと、これまでに本や記録映画が教えてくれたその下を通る。
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 数え切れないメガネ、義手義足、鞄、靴、、各展示室を進んでゆく。息苦しくなり、写真を撮る気にはなれない。通路の壁一面に犠牲者のごく一部の写真が貼られている数千人が銃殺された「死の壁」には花が置かれている。みな静かにガイドの説明を聞く。
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 アウシュヴィッツ第二収容所ビルケナウの鉄道引き込み線
両側に300以上の木造の囚人棟があったそうだ。保存されている粗末な囚人棟と薄暗いガス室を通り抜け、犠牲者の国際追悼記念碑へと歩いた。
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 ワシントンDCにあるアメリカ合衆国ホロコースト記念博物館 United States Holocaust Memorial Museum に行ったのは、2013年だ。そこはホロコーストを学ぶ場だった。
ヨーロッパ大陸で起きた大量虐殺の歴史史料、ビジュアル化されたデータ、記録映像が米国流にダイナミックに展示された館内。HOLOCAUST ENCYCLOPEDIA 百科事典を読むように順路に沿って歩き、ヒットラーのナチス・ドイツ政権がいかに冷酷無慈悲に、ヨーロッパのユダヤ人600万人を迫害し殺害したかを学んだ。
 そして今、数多く作られた絶滅センターの中の最大規模の収容所、アウシュヴィッツ=ビルケナウに立てば、80年前理解をはるかに超えるジェノサイドが行われたその地で、全くありきたりだが、自分にできるのはただ悲しみ祈ることだけなのだと思う

 重い一日を過ごした翌日、クラクフ旧市街を散策した。
今回の旅行で訪れた美術館の多くは、外側から見れば古びた目立たない建物なのに、中は光を取り込むよう近代的に改築されている所が多かった。
このチャルトリスキ美術館 Muzeum Książąt Czartoryskich そうした造りで、狭いドアを入った先に広がる明るい中庭に驚いた。
ダ・ヴィンチ「白貂を抱く貴婦人」はやはり美しい。ポーランド侵攻でナチスに収奪され、クラクフに戻るまでの経緯も興味深い。
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 中央市場広場の中心に織物会館がある。観光用の馬車がカッポカッポと通り過ぎてゆく。
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 聖マリア聖堂、祭壇と天井の美しさは必見だ。

 ポーランド第二の都市クラクフは、ワルシャワのように爆撃で破壊されることがなかったため、歴史のある建物がそのまま残っている。
旧市街の南にあるのはヴァヴェル城 Wawel Royal Castle 、16世紀までの絢爛たるポーランド王宮だ。ヴァヴェル大聖堂の古い鐘の登った
薄暗い洞窟や火を噴くヴァヴェルの竜には、様々な中世の伝説が残っているらしい。
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 城の下、ビスワ川に沿って歩道を歩いた。と、ふと立ち止まった時、全く偶然だが、その敷石の一つに Roman Polanski という名前が刻まれているのに気づいた。調べてみると、フランス生まれの映画監督ロマン・ポランスキーはこの町で幼少期を過ごしたユダヤ人であり、妊娠中だった母親はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で亡くなったのだという。その後のシャロン・テート事件といい、なんという壮絶な人生だろう。ワルシャワを描いた『戦場のピアニスト』 The Pianist には、より深い意味が込められていたことを知らなかった。

 ポーランド国鉄でワルシャワに移動する日の午前中、トラムで川を渡り、シンドラーの工場 Oskar Schindler's Enamel Factory 現地ツアーに参加した。
スピルバーグの映画 Schindler's List が伝えた物語の背景、1939年から45年にかけて、ポーランドで起きた出来事が時系列に展示されている。工場で作られたホーロー鍋と、ゲットーから連れ出され、収容所に送られることなく生き延びた人々の写真、そしてこれはシンドラーが実際に使っていた机だ。
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