しみじみと9月2011/09/10

 言うまでもないことだが、様々なことが同時進行で起きている。
教えたり笑ったり、食べたり悔やんだり、見たり驚いたり、聞いたり考えたりしているうちに早くも9月。
 娘の初出張と息子の独立予告があり、子どもたちがもはや子どもではなくなったことを否が応にも認識する。
 大切な友人たちの心配ごと、恩師の訃報、、、秋が影を濃くしてゆくが、行き帰りに飛んでいるトンボを見て、少し気持ちを軽くする。

 Kさんに教えていただいた『ナヴァホの砂絵』を読んでいる。
ウォレス・スティーヴンスの「黒むく鳥を見る13の方法」は、18歳(!!)の時に高島先生が教えてくださった。ガートルード・スタインの「アメリカ人の成り立ち」は、20歳の時青沼先生が。
 そうして学んだはずのことは、怠け者にとって、今ではおぼろげなイメージのようなものでしかないのだが、何かの折に力になってくれるようにも思う。トンボと同じようにね。

 こうして座っている机の右の壁に、ナヴァホの砂絵が架けてある。横たわるコヨーテと羽飾り装束のウォリアー(多分)。5年前にアリゾナで買った観光客用のお土産だけど。

2001.9.11 ミネソタ2011/09/11

 ミネソタ州ブルミントン市のジェファソン高校で、1時間目の授業中だった。
珍しく校内放送が流れた。
 校長先生は、ニューヨークのワールド・トレード・センターに航空機が衝突したこと、ペンタゴンにも1機墜落し、それらがテロリストの同時攻撃と思われることを伝え、重大な事態だが、みな落ち着いていつも通り行動するように、と締めくくった(ニューヨークとの時差は1時間)
 もちろん学生たちは動揺し、口々にあれこれ言い合って授業は中断された。間もなく休み時間になり、アメリカ人日本語教師のフランセスと教員室へ行くと、大勢の先生たちがテレビの画面を見ながら、心配そうに話していた。
3月までホームステイさせてもらっていた副校長のメアリに
「アメリカのセキュリティは大丈夫?」と聞いたのを覚えている。
「心配ない」

 3時間目と4時間目を教えるケネディ高校へは、自分の車(中古のサターン)で移動した。車のラジオをつけると、ひたすら "Evacuate" "Evacuate" が繰り返されている。人が集まる場所からとにかく避難するように、という呼びかけのようだ。その時点で、全米中のどこにどんな攻撃が加えられるのか把握できなかったため、大型商業施設などから即刻退避するように、とラジオは警告し続けた。
 ミネアポリス周辺ではモール・オブ・アメリカやウェルズ・ファーゴセンターなどから人々が避難した、と後で聞いた。
 その時飛んでいた全ての航空機が着陸するまで、動いていた数百万に及ぶ交通機関の無事が確認されるまで、不安な一日が続くことになった。

 ケネディ高校の教室に着くと、ベトナム難民2世の優等生マリアがやって来て、一緒にテレビを見た。信じがたい2つのタワーの崩壊。
 ランチタイムの時、先生用のカフェテリアで、ドイツ語の先生が怒ったように「飛行機の衝突に耐えるビルなんて、世界中どこを探してもない」と言った。
 午後の休み時間、留学生活を始めたばかりの日本人高校生シュンとエリコが、一体何が起きたのか説明して欲しい、と混乱した表情で質問に来た。

 犠牲者の数は、当時数千人と言われた。イスラム系住民への様々な差別も報道された。
 間を空けず、犠牲者とNYCの消防士たちに捧げるトリビュート・コンサートが開かれた。G・クルーニーが呼びかけた"America: A Tribute to Heroes"にはB・スプリングスティーン、ニール・ヤング、U2、ビリー・ジョエルなど20数組のアーティストが参加した。
 それから何ヶ月も、September11関連のニュース、新聞記事は続いた。
 ペンシルベニア州に墜落したユナイテッド航空機には、ジェファソン高校の卒業生が乗っていたことが分かった。トム・バーネット氏は高校フットボールチームの選手であり、他の乗客たちと力を合わせてハイジャッカーに立ち向かったと言われている(映画『ユナイテッド93』)
今日調べてみたところ、Thomas-Burnettサイトがあった。

 日本語教師インターンシップ2年目の、新学期のできごとだ。夫と大学生になっていた息子は日本で留守番、中学生だった娘を同行していた。
 あれから10年、覚えていることを書いてみた。conflictのない世界というものは幻想だけれど、そこへ向かおうとすることに意味があるのだろうと思う。きっとね。

わ、これどこ?2011/09/17

 週末『恋とニュースのつくり方』(原題Morning Glory)を借りてきて、だらだら見ていました。ハリソン・フォードもダイアン・キートンも、難しい年齢になっちゃいましたねえ。
映画は若きレイチェル・マクアダムス主演のサクセス・ストーリーなんですが、こんな場面が出てきました。ん、これどこ?
一時停止して、iPhoneで確認用写真をパシャッ。

bryantparkNY

 せっせと資料を読むレイチェルの横にずんぐり座るのは、まごうかたなきガートルードおばさん、ここ最近の私のテーマであります。
gertrude stein statue new york とググってみたら、ピンポーン、出てきました。
ニューヨーク公立書館裏の、ブライアント公園なんだそうです。アメリカの彫刻家 Jo Davidson が1920年に作ったスタイン像(仏像的作品を意図したもの)の複製、と説明がありました。
デビッドソンのパリのスタジオでポーズをとった時、スタインはおだんご頭だったのでしょうね。5分刈りではなく。

 ピカソ、マチス、ブラックなど、まだ無名に等しい新しい画家の作品を買い集めるようになり、スタインは宝石や衣装に興味を持たなくなった、もちろんその余裕もなくなった、と何かで読んだことがあります。
つまり、おだんご頭(または5分刈り)は、20世紀の偉大な芸術後援者の象徴でもあったわけですね。