カール・マイって誰?2016/05/11

 ハドソン湾クエストの悪筆メモを解読しなくてはいけないのだが、今日聞いた話も書いておきたい。

 カール・フリードリヒ・マイ(1842-1912)というドイツ人作家の書いた小説が大変面白く、中でも『アパッチの酋長、ヴィネトゥ』はとびきり痛快で血湧き肉躍る冒険譚であるらしいこと。

 カール・マイ? スロバキア人学生に教えてもらうまで全く知らなかった作家だ。よく読まれているんだろうか。「ヴィネトゥ」が書かれたのは1893年だから、作品は19世紀、西部開拓時代の話だろう。日本語の資料はわずかで、取りあえず図書館に筑摩書房版をリクエストした。

 ドイツ東部の小さな町に生まれ物語を描く才能に恵まれたものの家が貧しかったため師範学校にしか進学できず、そこでの厳しい規律への反抗から禁固刑を受け更生施設や刑務所に送られたが、不自由な生活の中で想像の世界を広げ文筆を仕事にすることを決意し編集者を経てフリーの小説家になり、やがて当代随一の人気作家となったカール・マイの冒険小説はオスマントルコ帝国やアンデス山中、アマゾン流域、またアメリカ西部などを舞台としており、その地名地形風俗描写の綿密さもさることながら民族宗教を語る比較文化/文化人類学的視点は確かで、変化に富む奇抜で見事なストーリー展開に読者たちは息を呑んで夢中になり、70代になったアインシュタインとシュバイツァーとヘルマン・ヘッセでさえ少年時代にその魅力の虜になったことを膝を叩き合いながら語り合ったという。(wikiを一文にまとめてみた)

 そんな世界大冒険物語を書いたにもかかわらず、カール・マイは一度もアメリカへ行ったことはなかった。そして、ネイティヴ・アメリカンは白人の無法者の犠牲者として描かれている。って、へえ、面白そうですよね。

 春学期は上級文法を受け持っているのだが、このレベルの学生たちとは本の話ができるのがとても楽しい。日本ではあまり知られていない作家や翻訳が出ていない作家について、他では得られない新鮮な情報が入ってくるのだ。最近では、それがこの仕事の魅力の一つになった。