イーサン・ホークとシェイクスピア&カンパニー書店2016/03/12

 イーサン・ホークが主演した『ビフォア』三部作(リチャード・リンクレイター監督)の二作目『ビフォア・サンセット』で、ジェシー(イーサン・ホーク)がセリーヌ(ジュリー・デルピー)に再会するのは、パリの有名な書店Shakespeare and Company Bookstore(日本語wiki解説だ。小説家になったジェシーのプロモーション・トーク会に、思いがけずセリーヌが現れる。前作『ビフォア・サンライズ』のウィーンの朝から9年後のことだ。
 というシーンのいきさつを、実際に本を出版したイーサン・ホークが今年1月に同書店で行われた現実の朗読会で語っている
(写真も書店サイトから拝借)
ethan2016

 先代の店主ジョージ・ホイットマンに撮影を申し込んだ時、「何だって!映画なんかお断りだ。ハリウッドなんてとんでもない。」とけんもほろろに拒絶されたこと。娘(現店主)を通して許可が下りたこと。
 イーサン・ホークの本はまだ入手していない。写真の後ろに並んでいる緑の表紙が多分5作目の"Rules for a Knight"だ。 棚の上部に貼られているのは「ウォルト」ホイットマンだろうか。書棚の左に立つくるくるブロンドの女性が、現店主シルヴィア・ホイットマンのようだ。(ウィットマンという表記も)

 ノートルダム寺院が見える場所に建つこの書店は二代目で、初代のシェイクスピア&カンパニーはオデオン座に近い場所にあり一度移転したという。シルヴィア・ビーチが1919年、パリで英語の本を売るために開いた書店は貸し出しも行っており、移動祝祭日』にはまだ若い無名のヘミングウェイがどんなにこの店を頼りにしていたかが書かれている。また、シルヴィア・ビーチの本『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』で、魅力的だけれど偏屈なガートルード・スタインとアリス・B・トクラスの二人、ジェイムス・ジョイス『ユリシーズ』初版本刊行にまつわる話なども読むことができる。

 iTunesUのWGBH Forum Network Arts and Literatureに収められたA Moveable Feast(移動祝祭日)に関するパネル・ディスカッション(ヘミングウェイの孫にあたるショーンなどが参加)では、研究者たちが現シェイクスピア&カンパニーを観光地的な「テーマパーク」と呼んで苦笑していた。が、一文学ファンとしては、どんな大衆文化メディアを通してでも、作家とその世界を身近に感じられることは嬉しいのだ。

 シルヴィア・ビーチが「おっかなびっくり」のヘミングウェイをスタインの家に連れて行った話、スタインに彫刻家のジョー・ディヴィットソンを紹介した話、NYCブライアント公園にあるスタイン像、、、あ、そう言えば、ロビン・ウィリアムズ『いまを生きる』のラストシーンでイーサン・ホークたちが唱えるのは、ウォルト・ホイットマンの "O Captain! My Captain!" だった。
もうひとつ付け加えると、『草の葉』にあるその詩は確か1865年、リンカーン大統領を追悼するために書かれたのだ。

アメリカの高校の教科書2016/03/20

 Prentice Hall LiteratureのPlatinumは、高校1年生が language art のクラスで使う教科書だ。手元にあるのはこれだが、もちろん改訂版も次々に出されている。



 先月、文科省が2020年度に始まる新学習指導要領に合わせて高校国語の教科内容も検討中というニュースがあった。読み直してみると「現代の国語」と「言語文化」を必修とし、「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」などの選択科目が設定されると書かれている。

 アメリカの language art は「文学国語」「古典探究」に相当するかもしれない。このGrade10用教科書には、ポー、E.ビショップ、W.H.オーデンなどの詩、M.トゥエイン、ジェイムス・サーバーやラングストン・ヒューズ、ディラン・トマス、カポーティなどの短編が収められている。
おっと、好きなものを書いてしまったけど、シェイクスピア劇、キーツ、スタインベックの中編小説、レジナルド・ローズ作「12人の怒れる男」脚本なども入っている。何しろ1,000ページを超す分厚い本で、2000年当時教科書は学校の備品だった。どの科目も確かそうだったと思うが、学生たちは自分が選択したクラスの教科書を1年間借り受けることになっていた。今はきっとeBookが各自に配布され、持ち運び便利になっているんでしょうね。よく知らないけど。
 この本が楽しいのは作品の前に手引きguideがあり、作品の後にどう読むかのヒント、分析するためのポイント、批評的な読み方、読後要約のまとめ方などのページがあることだ。留学生の気分でパラパラと好きな部分を読み始め、いつの間にか引き込まれて時間が過ぎていく。
はい、三連休。冬学期が終了し、春休みでもあります。