本屋さんに行きたい ― 2020/08/07
謎の売れっこねえさん会、という講師仲間グループがあり、現在はそれぞれ別の学校で教えているが、時折おいしいお店に集まって本の話などしている。コロナ自粛期間に入ってからは3回、Zoom茶話会が開かれた。
コーヒーを飲みながら、最近読んだ本の紹介をし合う。まあ、面白そう。うんうん。それ、いいですよね。へえ、そうですかあ。えっ、何なに?もう一度ご本見せてください。
先週末に開かれた会の時、その前日に思いつきで作ったスライドを示しながら、3軒の独立系本屋さんの話をした。必ずもう一度行きたい パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店、サンフランシスコのシティライツ書店、それからニューヨークのストランド書店だ。3軒とも話題にするのが恥ずかしくなるほど有名で、ガーディアン紙サイト
などにも当然載っている。そして、もう一度行きたいなんてエラソーだが、実際のところ英語の本を読むにはものすごく時間がかかるし、空間の雰囲気が好きなだけなのだ。
にしても、旅行に行けない今、それらのサイトを覗くのは何て心湧き立つことなのだろう。
ストランドから定期的に届くメールに、先月気になる画像があった。それはフェイスマスク。その後何回チェックしても品切れだったマスクが、今日は1枚だけ注文可だ!

思わず飛びついてしまった。上とは違う柄、ストランドロゴ入り。うふふ。
ただし13ドルのマスクにその倍の送料では、どうもすっきりしない。本も購入するなら何がいいだろう。

いろいろ迷った末、Amazonの「あとで買う」に長いこと入れっぱなしだったアンセル・アダムスの写真集を注文した。
書店サイトにアクセスし、空想の中でドアを開ける。これはたぶん、小林信彦さんが教えてくれた「ド・セルヴィ式」旅行だろう。この時期、とても有効な方法だ。お買い物までしなくてもいいけど。
受難の物語をなぜ読むのか ― 2020/07/04
数日前、タブマン紙幣の続報がCNNに出ていた。

20ドル札の表にハリエットが登場するのは、すいぶん先になりそうだ。現政権下での発行は、言うまでもなく、あり得ない。
コロナ禍でやむにやまれずやみくもに開始されたZoom授業に翻弄され、ヘロヘロになりながら過ごした数週間だった。それぞれの場所にいる誰もが、初めて経験する劇的な環境の変化に疲れているだろう。出口は一向に見えてこないのだし。
気ままな teach&fly 教えて飛んで生活がいかに幸せなことだったか、ひしひしと感じている。stay home 期間の収穫は、積ん読の山がだいぶ小さくなったことだろうか。ヴァーチャル美術館、クオモ兄弟、一ヶ月だけのNetflixでミシェル・オバマとマリッジ・ストーリー、近所の友だちと数回の海岸散歩、、、そうこうしているうちにBLM運動が激しくなった。
テネシー州メンフィスの国立公民権博物館(ロレイン・モーテル)、アラバマ州モントゴメリーとバーミンガム、ジョージア州アトランタで、M.L.キング関連の公民権博物館を巡ったのは09年だ。それ以降もボストンの黒人歴史博物館、アーカンソー州リトルロック高校、シンシナティの地下鉄道博物館、スミソニアンのアフリカン・アメリカン歴史文化博物館など、何年もかけて、自分でも理解できない熱心さで足を運んだ。
学生時代のL.ヒューズから、ラルフ・エリスン、J,ボールドウィン、、マヤ・アンジェロウ、トニ・モリスン、、、コルソン・ホワイトヘッドも読んだ。そしてパンデミックの中のBlack Lives Matter、もう感情移入し過ぎて、胸が苦しくなるほどだ。これは一体なぜなのか?
小野正嗣さんの文芸時評に答えがあった。朝日新聞の切り抜き(6月24日)は、同僚のY先生が講師室の引き出しに入れてくれたものだ。ありがとう、読書仲間。
「こうした黒人たちの受難の経験をなぜ僕たちは読むのか? たぶんそれらが、すべての<人間>につながる普遍性を帯びているからだ。
警官に膝で首を押さえつけられ、母に救いを求めながら亡くなった人の姿に、僕たちが深く動揺するのは、彼が人種差別の犠牲者であると同時に、虐げられ辱められた者だからだ。彼の命とともに僕たちの中にある<人間>も辱められたと感じるからだ。 <文学>は、人種や言語の壁を越えたそうした普遍的な痛みをつねにその懐に宿し、決して忘れない。」
Following them ― 2020/01/13
追いかけるのではなく、ついていく。聞いたり読んだり、観に行ったり、忘れかけたりしていることがらの中に、頭の中でタグ(付箋)付けした名前がいくつかある。
ハリエット・タブマンはPodcastに資料が置かれていた。ゴールデン・グローブでは主演女優賞ノミネートだけで、あまり話題にならなかったが。
ガートルード・スタイン、ジョージア・オキーフ、スーザン・ソンタグ、、、同様に脳内タグ付きの力強い女性たち。
ラングストン・ヒューズ、ジェームス・サーバー、ヘミングウェイ、サリンジャー、アップダイク、M.L.キング、R.ブローティガン、レイモンド・カーヴァー、、共通点はよくわからないけど、その言葉が染みついたタグ付きの人々。
彼らの名前を見つけると弾んだ気持ちになり、目を通し、保存し、読み直す。
そうそう、ジャック・ロンドンもその一人だ。ハリソン・フォード「共演」で、バックの物語が何回目かの映画になっていた。2020年版は進化したCGがあってこその映像だろう。人気俳優だから日本公開も2月。ついていく楽しさを味わえそうだ。

塩屋崎灯台2019 ― 2019/12/31

前回ここを訪ねたのは2012年の10月、震災後の復旧工事がまだほとんど手付かずだった時期だ。崖は崩れて、入り口で封鎖されていた。
あれから7年、灯台への階段は美しく整備されており、高さ190mの小高い岬を登った。灯台の上まではさらに103段のらせん階段だ。ぐるぐる、ふうふう。高い所があればいつも上まで行きたいと思うが、謙遜でなく冗談でなくそのうち登れなくなるのだろうと、しみじみ、じわじわ、ひしひし、思い至る。まあ、登れるうちに登りましょ。旅行もそう、行けるうちに行かなくちゃね。
冷たい風に吹かれて太平洋を見晴らした。沖には白い船が一隻、流れる飛行機雲、遠い三日月、
2019年が過ぎていった。
そうだ京都の紅葉 ― 2019/12/15
2週間前の週末に京都へ行った。2泊3日で13寺(お寺の助数詞は〜寺、〜山らしい)と言うと「へえ、よく歩きましたね」と呆れられるが、美しい紅葉に夢中になり一人むやみに歩き続けてしまったのだ。
どのお寺も心を動かす素晴らしい風景だった。人混みは東京駅並みだし、国内外からの無遠慮な観光客も少なくなかったけれど。
いつか行きたいと思っていた秋の京都、数えてみれば京都行き自体30数年ぶりだ。大きな課題を達成したような気持ちで、繰り返し写真を眺めている。
まず、洛北の蓮華寺。出発前、この地の大学に通った中学の同級生Y君が推薦してくれた。書院の奥から見る色鮮やかな庭は額縁の絵のようだ。初日は叡山鉄道沿いに圓光寺、詩仙堂を回り、

夕暮れの金福寺へやって来た。これは与謝蕪村が再建した芭蕉庵だ。
裏山に登ると蕪村のお墓があった。大らかなリズムを近代のように感じていたが(と言うより何もかも忘れかけている国語史)、江戸の人だった。覚えていたのは有名な二句だけ。
春の海終日のたりのたりかな
葉の花や月は東に日は西に

2日目は嵯峨野と嵐山。平家物語の祇王寺はつつましやかだ。
清涼寺の国宝釈迦如来の面差しは、ミャンマーの穏やかなブッダ像を思い出させた。二尊院でしあわせの鐘を思い切りゴーン!とつき、石段を登って町を見下ろした。高い所があれば登ろう、足腰の立つうちにと、常寂光寺の多宝堂の上や嵐山公園の展望台まで歩を進めた。
天龍寺の美しい林を散策後、嵐電で北野天満宮のライトアップもみじ苑へ。そこから五条のホテルに戻るつもりだったが、よく確かめず反対方向のバスに乗り終点立命館大前で降ろされた。しみじみと日本文化に浸っていたのに、どこへ行ってもうっかり者だ。

最終日は王道の金閣寺からきぬかけの路を歩いて、龍安寺と仁和寺。
龍安寺は高校の修学旅行以来だ。記憶にない石庭の外の広い庭園、鏡容池を巡る路の木々も美しかった。
仁和寺ではちょうど観音堂内部が特別公開されていた。ご本尊の千手観音像や障壁画、三十三観音菩薩、日光の二荒山に通じる興味深い解説を聞いた。
満員電車のような錦市場に足を伸ばし、予約済みのレストランで遅めのランチ。お土産を買って、夕方の新幹線に乗れば、8時過ぎには東京に帰れる。JR東海のCMそのままだが、「そうだ京都」行ってよかった。
映画ハリエットとアレサ ― 2019/11/02
授業準備が終わった深夜、FB経由でトレバー・ノアの「ザ・デイリー・ショー」とスティーヴン・コルベアの「ザ・レイト・ショー」にアクセスする。
南アフリカ出身のトレバーは外側から天衣無縫にアメリカ社会に斬り込み、率直なトークが矛盾をあぶり出していく。内側にいるスティーヴンは、巧みなひねりでフラストレーションを笑いに変える。
昨夜見たレイト・ショーのゲストは、映画『ハリエット』主役のシンシア・エリヴォだった。20ドル紙幣はどうなるんだろうという話も出た。この後アレサ・フランクリンの映画に主演するとのことだ。ケネディ・センター名誉賞授賞式でのアレサ画像が温かい。
そしてシンシアのすばらしい歌声、スティーヴンと一緒に涙してください。
レイト・ショーの音楽ディレクター、ジョン・バティステも豊かな才能の持ち主だ。グリニッジ・ヴィレッジに聴きに行きたいものです。
南アフリカ出身のトレバーは外側から天衣無縫にアメリカ社会に斬り込み、率直なトークが矛盾をあぶり出していく。内側にいるスティーヴンは、巧みなひねりでフラストレーションを笑いに変える。
昨夜見たレイト・ショーのゲストは、映画『ハリエット』主役のシンシア・エリヴォだった。20ドル紙幣はどうなるんだろうという話も出た。この後アレサ・フランクリンの映画に主演するとのことだ。ケネディ・センター名誉賞授賞式でのアレサ画像が温かい。
そしてシンシアのすばらしい歌声、スティーヴンと一緒に涙してください。
レイト・ショーの音楽ディレクター、ジョン・バティステも豊かな才能の持ち主だ。グリニッジ・ヴィレッジに聴きに行きたいものです。
2019年秋の教室 ― 2019/10/26
課末テスト中のY校、研究クラス

ケータイが生活の必需品になって10年、留学生たちも肌身離さずスマホを持ち歩いている。授業中に言葉の意味を調べるなど便利ではあるが、こっそりゲームやSNSに興じる者もいなくはない。使用をどの程度自主性に任せるのか、授業中は一切使用禁止したほうがいいのではないか、、検討されつつも結論は出ないまま過ぎている。
が、アジア系のY校今学期からのルールがこれ。
「テスト中はケータイを預けよう」
教務の先生方が考案したボックスを使うことになった。
2年ほど前、AirDropでテストの正解を配布した再履修の学生がいたっけ。解答ファイルはたまたまAirDropをONにしていたわたしにも届き、思わず吹き出したものだ。その労力を勉強に使いたいよね。
ここ最近、中上級以上のクラスを教えることが多くなった。日本語能力試験JLPTのN1、N2文法や、大学進学を目指す学生の日本留学試験EJU試験対策を担当している。首都圏だけでなく地方の大学も留学生を積極的に受け入れるようになり選択の幅は広がったが、増え続ける学生数にどの大学の倍率も高い。大学入試には日本語だけでなく、一通り勉強しなくては解けないレベルの総合科目の試験もあって、日本語学校だけでなく塾に通う学生も少なくない。受験シーズン開始の秋だ。しっかり取り組んで、明るく卒業できますように。
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