機内誌のポー特集2019/08/16

 取り立てて予定のないお盆休み、今月の大韓航空機内誌には何が載っているんだろう?と暇に飽かして開いた Beyond 8月号はエドガー・アランポー特集だった。わ!

beyondpoe

 まずエディターズ・ノートが、大鴉"Nevermore”の詩人ポーを文学世界のパイオニアとして紹介する。続いて20ページにわたり、その文学的遺産が様々な角度から解説されていた。
ジョイス・キャロル・オーツ曰く
「一体、ポーに影響を受けなかった文学者などいるのだろうか」
コナン・ドイル,レイモンド・チャンドラー、ジョン・ル・カレ、そして江戸川乱歩、マラルメ、ヴェルレーヌ、ドストエフスキー、さらには音楽界のドビュッシー、ラフマニノフ、ビートルズ(I Am the Walrus)、グリーンデイへの言及もあった。

 ヴァージニア大学に入学したものの養父からの学費が足りずギャンブルに手を出したポーは、結局多大の借金を抱える羽目になり、養父から縁を切られてしまった。困窮し叔母を頼って移り住んだボルチモアで、年若いヴァージニアと結婚したその後数年、借金取りから逃れるため次々と移り住んだ家で、片手に酒瓶、片手にペンを持ち、「アッシャー家の崩壊」黄金虫」「モルグ街の殺人」などの名短編を書き上げたのだという。原稿料はわずかであり、その後もポーが生活苦から抜け出すことは生涯なかった。

 機内誌Beyondの文化度は高い。去年の春利用した便で特集「レイモンド・カーヴァー」に感心し、今年3月号の「バウハウス」特集は持ち帰らせていただいた。
まだ読んでいないが、1月号「セザンヌ」、7月号「ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ」も要保存だ。

 JALやANAの機内誌もネット上、または指定のオンライン書店で閲覧/購入ができる。ただ正直なところ旅行情報が中心で、Korean Airほど読み応えのある記事はほとんど掲載されていないようだ。
 不安定な日韓情勢に戸惑う今日この頃。でも、政治を離れれば、同じように文学や美術を心の糧として暮らす人々がいる。こうした穏やかな共感が揺らぐことはないのだと思う。

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