世間が面白くない時は勉強2016/11/12

 孫引きだが、ドイツ語学者関口在男さんの『独逸語大講座』昭和3年(1931)最終巻に「世間が面白くない時は勉強にかぎる」という言葉があるそうだ。(半歩遅れの読書術、國府功一郎、日経新聞10月16日)
妙に納得し、Evernoteに入れておいた。

 予想外の結果に終わった米大統領選に、普段はつかないため息が止まらない。よその国のことにせよ、長年のヒラリー・ファンにはショックだった。頭脳明晰で比類ない経験を持つ女性、面白みに欠けるかもしれないが、公平で度量の大きなヒューマニストだと思う。そういう女性が次に登場するまでに何年かかるのだろう。
時代の流れが変わりつつある。ポピュリズムの波がイギリスから大きくうねってアメリカに到達した。大らかで寛容だったオバマ大統領の時代が終わる。

 世間が面白くない。だから勉強だ。
こんな時引っ張り出す英語の語彙練習帳には、過去数回の中断の跡がくっきり残っている。今年こそ年末までに終わらせよう(と毎回思うんだけど)。
 そして気持ちを引き立てるため、丁寧に家のことをしてみる。種を蒔いたばかりの冬のベランダ菜園に水をやり、パンを焼き、煮りんごを作った。晩秋のいい匂い。
あ、そうそう、不気味なパンダ顔になるコーヒー・デトックス・パックも。
夕方、図書館から『ボブ・ディラン自伝』到着のお知らせメールが入った。

9月のイギリス旅行 (6)ロンドン最終日2016/10/15

 最終日は夕方まで、それぞれ自由にロンドン市内を歩くことにした。キングズクロス駅から徒歩2分の小さなホテルは部屋も小さくスーツケースを開けるスペースさえなかったが、観光に便利でよかった。半地下で出されるフル・イングリッシュ・ブレックファストも。
 相棒Uはバッキンガム宮殿へ向かう。わたしはセントポール大聖堂まで地下鉄で行き、(ハリポタで破壊された)ミレニアム橋を渡って、テート・モダンへ歩いた。
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これを見るために
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 ロンドンの美術館/博物館はテート・モダンを含め大半が無料だが、こうした企画展には10数ポンドの入場料が必要だ。また当然ながら、常設展と違って写真撮影はできない。
 この回顧展は、ジョージア・オキーフが写真家アルフレッド・スティーグリッツと出会い、ニューヨークの画廊291に画家として初めて作品を発表した1916年からちょうど100年を記念するものだった。オキーフの一世紀。
 ニューヨーク時代、抽象画への傾倒、ジョージ湖、花と静物、ニューメキシコ、年代別に並べられた作品群が、オキーフという類稀な人物を物語る。ゴーストランチから見えるペダーナル山についての冗談めいた発言「これはわたしの山です。十分に山を描き切れたらわたしのものになる、と神様が言ったのです」
 元は発電所だったテート・モダンは広々と機能的に改築され、鉄骨やステンレスがいかにも21世紀だ。常設展に並ぶ傑作モダン・アートの数々も見逃せない。マーク・ロスコの部屋もよかった(もう一組の壁画を、千葉県の川村記念美術館で静かに見ることができる)。歩き疲れて外に出ると、テムズ川沿いの広場でエド・シーラン風のシンガーソングランターが歌っていた。

 そのまま川沿いを西へ。シェイクスピア・グローブ座前では、即興詩人が詩を売っている。注文者を詠った詩をタイプライターで打ち込むらしい。文化ですねえ。感心しながら歩いていると、こちらの顔をしげしげ見ながら急接近してくる人がいる。えっ何?「S先生でしょ」
うわあ、びっくり。元同僚のTさんでした。サングラスかけてたのによくわかったね。Tさんは一人でミュージカル三昧のロンドン旅行なんだそうな。不思議な偶然を証拠写真に撮り、西と東に別れた。
 そしてバラ・マーケットBorough Market
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 それから、2016年現在無料で登れる新しいタワー Sky Gardenから、ロンドン塔とタワーブリッジを見下ろす。ビッグベンも見えるけど、ちょっと遠い。
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 Uとは夕方、コベントガーデン駅横のMarks&Spencerで待ち合わせた。
一緒に夕食を取り、今回最後のお楽しみ、キャロル・キングのミュージカル "Beautiful"を見た。"Tapestry"に至るまでのキャロル・キング、ジェイムス・テイラーやジョニ・ミチェルに会う前の若いキャロルの物語が胸を打つ。長い間聴いてきたひとつひとつの意味が、今ようやくわかったような気がする。
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9月のイギリス旅行 (3)リヴァプール2016/10/10

 午後6時過ぎ、予定通りスタバに現れたUとタクシーでユーストン駅へ急ぎ、7時過ぎのリヴァプール行きに飛び乗りホッとしたのも束の間、聞き取れないイギリス英語の理解できない理由により出発は1時間遅れだった。8時発のもあるのにどうするの?と乗務員に質問したら"We go together."と答えが返ってきた。へえ〜。
11時過ぎにリヴァプール・ライム駅到着。タクシーでようやくホテルに着いたが、ツインのはずの部屋がダブルで部屋替えを申し入れ、フロントから遠く離れた迷路の向こうにある薄暗いけどインテリアはポップな部屋に落ち着き、長い長い一日が終わった。

 とは言っても、ぼやいてはいられません。疲れを知らない旅行人格。こんなに楽しいことがあるんだから。
 晴天の2日目、まずはマージー川沿いのウォーター・フロントを散歩した。
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そしてThe Beatles Story 物館へ。
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世界遺産のアルバートドッグ 散策後はマジカルミステリー・ツアーのバスに乗る。
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するとこんな場所へ連れて行ってくれるのだ。ここはペニーレーン
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ストロベリー・フィールズ
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ジョンがミミおばさんと暮らした家
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ポールが幸福な少年時代を過ごした家
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 もちろんジョージやリンゴの家も、それぞれが通った学校、教会なども回る。ツアーバスは世界中から来た人々で満員で、みんな熱心に解説を聞き、流れる曲に合わせて歌っていた。メンバーが生まれ育った場所を訪ねると、"In My Life"の歌詞が改めて胸に染みる。
 解散は市内中心部。レコードデビュー前の4人が演奏していたマシューストリートのキャバン・クラブ近くでバスを降りた。近くにはジョンの銅像、エリナー・リグビーの像もある。all the lonely people...
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 Saturday with the Beatles も予約しておいた。でも、正直に書くと、このバンドは全くダメ。8:00pmスタートのはずが9時過ぎに始まった上に、呆れるほど下手くそだった。前座のほうがよかったよね、と言い合いながら5曲で退散した。
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9月のイギリス旅行 (2)博物館巡りなど2016/10/08

 役に立つかもしれないので、情報も載せておこう。ごく一般的な内容だが。
ロンドン市内の移動にはオイスターカードを事前に購入した。移動の参考にしたのは主要バスマップ
また、ロンドンからの列車移動にはBritrail pass(1等)を使った。National Railサイトなどを通して、事前購入なら区間別の切符を安く入手できることもわかったが、同行者Uから「1等passがあれば、満席の心配をせず好きな電車に乗れるんじゃない?」と提案があった。なるほど、さすが。
Virgin Train1等は軽食と飲み物(アルコール類も含む)が無料でサービスされ、座り心地よく快適だった。Heathrow Expressにも乗れるのも便利だ。

 さて、初日の続き。
予定を立てている時には、ゆっくり歩く静かな博物館をイメージしていた。多分疲れているだろうが、この際じっくりと展示物を見るはずだった。ところが現実の館内は、日本の美術展ほどではないにせよ、大勢の人々、先生に連れられた学生グループやガイドに先導されるアジア人観光客グループなどで溢れている。ぐわんぐわんと響く靴音、人の声。ナショナル・ギャラリーで1時間半、大英博物館で2時間、、もう気力が続かない。ナイト・ミュージアム3の素敵なランスロットはいないし、サットン・フーから日本美術(横尾氏あります)を回ったところで遅めの昼食を取り、大英図書館へ移動することにした。
 
 大英図書館で見られる無料展示室 Treasures of the British Library は素晴らしい。ダヴィンチの手書き原稿、バッハ、モーツァルトの手書き楽譜に驚き、ベオウルフ、ジェイン・オースティン、そしてビートルズの歌詞原稿に気持ちが和らいだ。
この図書館はデジタル・アーカイブ化が進み、今では100万点以上の画像が検索できる、って何てすごいことなんだろう。一例:マグナ・カルタの資料
 気分を持ち直し、地下鉄に乗った。Uとの待ち合わせはパディントン駅のスタバ。
WiFiが使えるので選んだ場所だ。

春のシドニー旅行#42016/04/09

 シドニーには他の都市同様たくさんの観光ツアーがあり、予約不要なフリーツアーに参加し徒歩やバスで市内の見どころを回ることもできる。でも無計画な二人組は、気の向くまま市内を歩き回った。

 その他に行ったのは
・シドニー博物館 Museum of Sydney
シドニーの歴史を知るのによいという説明通りの場所だった。入植当時の歴史、囚人を乗せた第一船団11隻の模型や先住民アボリジニとの接触など。上映中のムービーがオペラハウスの建築デザインを解説していた。
年別に並んだハーバーブリッジの厖大なデジタル写真集を操作していると、老婦人が近づき隣に並んで、橋が中央で繋がり完成後人々が最初に橋を渡るまでの様子を熱心に眺めている。お話ししたところ、わたしの母と同じ年だった。もう一人、小学校の同級生だったという老婦人もご一緒で、遠くから見える完成記念式典(1932年)の大きな照明が子供心に恐ろしかった、と笑いながら教えてくれた。
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・フィッシュマーケート Sydney Fish Market
世界第二位、築地魚市場に次ぐ規模(水揚量が大きい)そうだが閑散としている。と思うのは、築地の人混みが当たり前になっているせいでしょう。ムール貝や牡蠣が新鮮、食べなかったけど。見たことのないエビ bay bugs なども(今調べたら和名はウチワエビモドキ)海老じゃないのか?
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・クイーン・ビクトリア・ビルディング QVB
1898年完成の美しいビル。ショッピング・アーケードになっている。

・パディズ・マーケット Paddy's Markets
こちらも歴史の古いビル。QVBと違って全く庶民的、というか1階のお土産品・衣類・雑貨・生鮮野菜マーケットは一体ここはどこ?というアジアっぽい雑多な雰囲気だった。だから好き。

・野外オペラ ツゥーランドット Turandot on Sydney Harbour
出発2日前にプッチーニのオペラが開催されるのを知った。いいタイミングで初めてオペラを見ることができラッキーですね。無教養ゆえ、正直なところ内容をほとんど知りません。パバロッチ氏とポール・ポッツさんのNessum Dormaを聴いたことがあるだけ。ピン、パン、ポンが愉快。3つの謎かけって何?前から2列目に座り、ドラゴンの口から突然噴き出す炎に驚く。
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Amazonで見たり聴いたり2015/11/18

 Amazonで音楽配信サービスPrime Musicが始まった。
Prime Videoの内容を確認して、つまりHuluやNetflixと比較の上10月初旬Amazon Primeに再加入したのだが、こんな料金で見放題聴き放題って正しいこと? サービスを受ける側としてはもちろんありがたいけど。

 ここ最近は通勤の行き帰りにダウンロードした映画やドラマを見るようになり、読みたい本もあってなかなか忙しい(疲れ目に注意!!)
特にNHK地上波放送で見た吹き替え版"Downton Abbey"には笑ってしまうようなセリフがいくつもあり、字幕版でイギリス的に辛辣なウィットを確認できそうなのがうれしい。アメリカ的ユーモアとはずいぶん違うんだよね。
コックのパットモアが下働きのデイジーに
「辞書でも飲んだのかい」いつになく難しい言葉を使ったので
「邪悪な双子に入れ替わったのかい」指示に従わないので
「ナイル川まで水を飲みに行っていたのかい」ただ遅かったので
などなど英語では何と言っているのかな。

Let It Beのフレスコ画?2015/10/24

 秋葉原と千葉の間のJR線沿いに、このアパートを見かけた人は少なくないだろう。でも、写真を撮りに行く物好きはほとんどいないかもしれない。
今日沿線に住む息子を車で送った後、およその目星をつけて国道から脇道に入り込んでみた。おお、ありましたぞ。
letitbeapartment

数年前この壁画の存在を教えてくれたのは息子だ。その後わたしもこの路線を利用するようになった。高架線の防音壁が続いているため、電車の座席に座って見えるのはジョンとポールの頭だけ。窓際に立てば4人をとらえることもできるが、何しろ電車は走行中だから見えるのはほんの数秒だ。さらに上下の電車が定刻通りの場合、このアパートの周辺ですれ違うらしく、反対方向へ走る車両に遮られることも多い。
 リアルタイム・ビートルズ世代としては、これを見ると励まされるのだ。新しいことはすぐ忘れるけど、Two of UsからGet Backまで歌詞を諳んじることもできると思う、多分。最近では勝手にLet It Beフレスコ画と呼び、時に心の中でジョンに話しかけている。