一年が早い!12月のメモ2016/12/11

 『ベストセラー、編集者パーキンズに捧ぐ』は少し前の週末、シネマ・イクスピアリでの初日レイトショーに、日本語音声指導講習会の後駆けつけた。総観客数が(わたしを含めて)驚きの5人!何しろ開始7分前にたった一人しかいなかったのだ。
という具合で、話題にならない地味な映画だったが楽しかった。コリン・ファースは本当のマックス・パーキンズ同様、ずっと帽子をかぶり続け、ジュード・ロウのトマス・ウルフは立ったまま、冷蔵庫を机がわりにして原稿を書きなぐっていた。書き捨てていたのではなく、読み返すことなく木箱3つ分の原稿を書き続けたという。実際には身長2メートルの大男だったらしいから、執筆姿はさぞ迫力があっただろう。
 実は原作の翻訳を、まだあまり読み進んでいない。パーキンズに見い出されたフィッツジェラルドが処女作『楽園のこちら側』を出版し、ゼルダ・セイヤーと結婚した辺りまでだ。映画のストーリーが始まる前ということか。いや、本はとても面白いのだ。冬休みに入ったら、残りをきちんと読むつもりでいる。映画のこのシーン(ヘミングウェイ役それほど似ていない。ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』のほうがよかった)が語られるのは、きっと下巻だろう。

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 キーウエストにヘミングウェイを訪ねたパーキンズ 1935年(帽子は手に持っている)実際の写真

 秋学期はK校が上級文法クラスと漢字N2クラス、Y校では初中級を2クラス教えていた。ここ一ヶ月行き帰りの電車でボブ・ディランを聴き続け、自伝(クロニクルズ1)と新書の解説本を読んだ。人がみな孤独で投げやりで自分にかまけ愛は虚しく通り過ぎ行き場のない思いが風に舞っているディラン的世界のその向こうに、決して聞き逃してはならないメッセージがあることを知ったように思う。
 昨晩のノーベル賞授賞式でのパティ・スミスを、ついさっき見ることができた。緊張して歌い直したからこそ、むしろパティのありのままの震えるような感動が伝わって、こちらもぐらぐらと揺り動かされた。

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