まだブランケットの話2016/07/16

 19世紀末のイギリスから送られた大量のポイント・ブランケット写真を見ると、その背景にもちろん18世紀半ばからの産業革命があったことを思い出す。機械化でまず綿織物が発達したのは大西洋の三角貿易によるもので、毛織物が工業化されるのは18世紀末になってからだ。先住民族との毛皮交易 fur trading に、記憶の中で断片になっていたヨーロッパ史が繋がっていく。
ポイント・ブランケット研究のこんなサイトもあった。The Point Blanket Site
写真はハドソンベイ・カンパニーの歴史サイトから(1898年バンクーバー島フォート・ルパートのトレーディング・ポストクワクワカ'ワク族の人々)
pointbbunch

  ウールリッチ Woolrich は1830年イギリス移民のジョン・リッチがペンシルヴァニアに作った毛織会社であり、ペンドルトン Pendleton はイギリスの毛織技師トーマス・ケイが1863年にオレゴンで始めた会社だ。
それらの大きな会社以外にも、woolen mill と呼ばれる毛織物工場が各地にある。

 わたしの知る限りでは、ミネソタ州のベミジが有名だ。Bemidji Woolen Mills はポール・バニヤンと青い牛ベイブで知られるベミジの町で、1920年に創業された。木こり lumberjack が着る赤黒チェックのウールシャツと聞けば、あ、あれ?とイメージが浮かぶだろう。そう、それです。
memidji

 また、同じミネソタ州にはファリボールト Falibault Woolen Mill もある。南北戦争が終わった1865年にドイツ移民が(馬力の、ってどういう仕組みなのか想像できない)小さな毛織工場を作り、川沿いの水力利用工場を経て1892年「新工場」機械が導入されたそこでは今でも高品質のウール毛布や、軍隊用の丈夫な毛布が生産されている。地味だが、アメリカ中西部らしい質実剛健なミルだ

 旅先で woolen mill を見かけたこともある。ずいぶん前だが、カナダのプリンスエドワード島で小さな MacAusland's Woolen Mill に入ってみた。マコースランド MacAusland はスコットランド移民だろうか。1870年に製材所を始め、1900年頃から毛糸を1930年代から毛布を作っているという。こちらも年季の入った織機が堅実に、暖かく柔らかい毛布を作り続けていた。

 土地の作り出すものはそこで暮らしていた人々に代々受け継がれた文化を語ってくれるから、旅行は楽しいのだと思う。
 布類と言えば、プエブロ族の村チマヨの人々が織るラグ類や、モン族の刺繍布、サンプルの10cm角だけ買って額に入れたトルコ絨毯、瀕死のヴィネトウが肩にかけていたサルティヨ毛布(カール・マイの冒険小説)などもあった。サルティヨ毛布って何?と思ったら、よく見かけるメキシコっぽい明るい色合いのストライプ毛布でした。そして、きっと憧れのまま終わるであろうナバホ族の美しい手織りラグ、、、
これからもいろいろなものに出会い、ため息をつくんだろうなあ。