ハドソン湾クエスト#42016/05/14

エピソード4 ヘルズ・ゲイト(地獄の門)を超えて
 36日目、解放感に溢れて再び水路に出る彼らを待っていたのは、Hell’s Gate というおどろおどろしい名前の峡谷だ。ヘルメットとライフジャケットを身につけて、荒波にもまれ、次々と現れる岩を避け急流を下っていく。出発から600km、行程の半分は越えたのだ。 Hayes River ヘイズ川には流れの緩やかな川幅の広い場所もあり、力を合わせて漕ぎ進んだ。岩場では川岸に降り、慎重に船だけを綱で引いて移動する(これもポーテージングと呼ぶらしい)。毛皮交易の先祖から五千年遡れば、そこには先住民パナパナ族とピチコナ族が住んでいた。川沿いの岩に古代の壁画が残っている。
 40日目、マニトバの夏は短い。冷たい雨が降り出し、乗組員たちはセーターとウールの毛布コート(ペンドルトン?!)を着込んで漕ぎ続け、中継地 Oxford House オクスフォード・ハウスに到着。村人の歓迎を受け温かい食べ物に癒され、共通の先祖を持つ人々に挨拶をして川に戻った。
 6週目を過ぎ、疲れ汚れ濡れそぼった乗組員はそれぞれに孤独であり、真のヨークマンになりつつあるが、船も痛手を受けている。時間をかけて水漏れを修理し(病人はカメラクルーの看病を受け)、ポーテージしながら川を下り続けるうちに、ペミカンはすっかり水浸しになった。どんよりした雲が執拗につきまとい、日に日に寒くなる。傷ついて弱ったBOBは何とかハドソン湾に近づいていたが、47日目、予期せぬ急流に飲み込まれ、二度三度岩にぶつかった後、大破した。
 19世紀の voyageours はそのようにして命を失ったのだろう。でも、これは21世紀のTV番組だ。乗組員と積み荷は撮影隊に救われた。となると、断念/撤退するのか。ここまで来て?