治療の選択2015/08/03

 あまりにもプライベートな出来事を書いたことが恥ずかしくなっているが、出してしまったものは仕方がない。恐らく気持ちが少しばかり麻痺していたんだろう。

 最初の心筋梗塞後、できる限りの情報をインターネットや図書館で集めたものの、それらが実際の治療に役立ったとは言えない。古い世代の母はインフォームド・コンセントに無関心で、自分の置かれた状況を理解しようとはしなかった。難しいことはわかりません、全てお任せします」と担当のお医者さまを全面信頼していた。

 手術を受けるべきか否か妹と相談し合っていた頃、もしかしたら下記のようなセカンドオピニオンが手助けになったかもしれない。手術は本人の希望だったし、後戻りはできないけれど。

日本心臓財団サイト

 手術後次第に体調が悪くなってしまうと、検査データに応じて様々な点滴治療が続けられた。ある症状を抑えるために強い薬が使われ、その薬によって別の症状が出てしまうのだった。最後の1ヶ月は幾度か救命措置も取られた。それを間近に見ていると、救命と延命の境目は曖昧であるように思われた。
治療の選択は本当に難しく、答え/結論を得て初めて、それが正しい道だったかどうかが判る。結論が出てしまった今でもまだ整理がつかない。

サボテンの植え替え2015/08/09

 週末、収穫の終わったミニトマトを片付け、ずっと気になっていたサボテンの植え替えに取りかかった。

cactus1

 手前の赤いサボテン(緋ボタン)を除く3種類は、何年か前IKEAで3個セットを買ったものだが、ゆっくり成長し、気がつけばプラスチック鉢の中でずいぶん苦しそうだった。子どもは分け、きれいに寄せ植えしたい。
 週末毎にちゃっかり晩ご飯を食べに来る娘が「赤いのはまだ仲間になっていない感じだよ」
日陰で数日根を乾燥させる必要があるらしい。一緒にゴロゴロしているうちにきっと馴染むでしょ。

サリンジャー評伝など2015/08/21

 6月に出版されたサリンジャーの伝記が、先週ようやく図書館から回ってきた。あとがきを含めると740ページに及ぶ分厚い本で、いつものように転がって読んでいたら肩が凝ってしまった。
 本はドキュメンタリー映画『サリンジャー』製作と同時進行で書かれたそうだが、映画の方は日本ではまだ公開されていない。トレイラー画面からも9年間の調査による膨大な資料の厚みが感じられる。見てみたいものだ。



 Dデイのユタ・ビーチ、ヒュルトゲンの森、カウフェリンク強制収容所の解放から終戦、300日足らずの期間にジェリーが経験した戦争の極限状態は、それを読む側の想像と理解をはるかに超える。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の原稿はヨーロッパの戦地にも持ち込まれ、10年かけて書かれた作品が1951年リトル・ブラウン社から刊行された(当初H社が出版に二の足を踏み、LB社が引き受けたそうだ。そのH社は数年後『オン・ザ・ロード』も断った。 何ともはや)
 ウーナ・オニール(チャップリン夫人)、戦時中のパパ(ヘミングウェイ)とのやり取り、「エズメ」のジーン・ミラー、どのエピソードも興味深い。ことにジョン・レノン暗殺犯のチャップマンを含む「暗殺者たち」の章では、これまでに書かれていない事件の詳細を知ることができる。

 巻末のグラス家リストもありがたい。2015年から20年の間に出版されるという短編集 "The Family Glass" を心待ちにするとしよう。未発表の長編やホールデン・コールフィールドが登場する短編群もあるらしい。それら原稿の山は、亡くなる2010年までサリンジャーが長い隠遁生活を過ごしたニューハンプシャー州コーニッシュ村の家の、伝説の金庫から発見されたのだろうか。


さよなら、ドクター・オリヴァー2015/08/31

 ロビン・ウィリアムズとロバート・デニーロが共演した『レナードの朝』(Awakenings)の原作になったのは、オリヴァー・サックス博士の著書だ。ついさっきニューヨーク・タイムズで博士の訃報を知った。



『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』はまだ読んでいない。素敵なタイトルの『妻を帽子とまちがえた男』も今年の宿題だ。
病気を持って生きる人間を記録することで見えてくる人生の本質、なんて書くと偉そうだな。とにかく面白いのだ。穏やかな笑顔の先生でありました。
R.I.P.
ところで、今思い出したんだけど、『レナードの朝』はゾンビーズ(The Zombies)の"Time of the Season"が流れるシーンがいいよね。