歩く観る聴く(年末バルセロナ&ローマ#2)2014/01/02

 アリタリア便でローマを経由すると、バルセロナ到着は深夜0時。ホテルに着いた頃、パリで数日過ごしてから移動していたMさん母娘はもう眠っていた。翌朝、バルコニーからの眺めは
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わあ、予想以上に素晴らしい。ここはガウディ作グエル邸の真向かいなのだ。バルコニー付きを確約してくれた予約サイトに感謝しよう。

 午前中はゴシック地区を歩く。ピカソ美術館で青の時代(1901-4)・バラ色の時代(1905-7)の瑞々しさ、ラス・メニーナス作品群の弾むような楽しさに浸る。キュビスムの始まりとされる「アビニヨンの娘たち」が1907年、ゲルニカを経て、ベラスケス作品を題材にしたラス・メニーナス連作(1957)まで50年もあるのだ。何だかすごい。
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 前回のバルセロナ訪問は、娘がサラマンカに留学していた08年のお正月だった。その時宿題にしたのが、4GATSでのランチだ。正直なところ味には感心しなかったが、やはり足を伸ばしてよかった。
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 壁に架けられた数多くの額の中に、こんなものもある。
ピカソとの深い関わりについて書かれているらしい記事や、「それでも恋するバルセロナ」の撮影に感謝するウディ・アレンのメッセージなどなど。
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 この日はカタルーニャ音楽堂(モデルニスモ、スペインのアールヌーヴォー様式、世界遺産)も観に行った。そして夜、友人たちはフラメンコ・ショーに、わたしは一人で教会へもの哀しいスパニッシュ・ギターを聴きに行った。

歩く観る飲む(年末バルセロナ&ローマ#3)2014/01/03

 3日目、友人たちはガウディ&お買い物コース、ミロ・コースのわたしは地下鉄で一人スペイン広場へ向かった。大通りをまっすぐ進むとモンジュイックの噴水だ。階段とエスカレータをずんずん上って、カタルーニャ美術館に着いた。

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 何という充実ぶりだろう。一千年を超える美術品が、ロマネスク、ゴシック、ルネサンスとバロック、モダンアートと主に4つのカテゴリーに分けられ、並んでいる。
この美術館のGoogle Art Project、今入り込んでみた。歩き疲れて座った大広間の丸天井も、ヴァーチャルに眺められるようだ。
 モデルニスモ期の画家、ラモン・カザスの絵もあった。4GATSに架けられているのは複製だそうだ。グラフィック・デザインやポスターも手がけたためノーマン・ロックウェル同様、商業画家とされることが多いかもしれない。
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 さて、いよいよカタルーニャの大画家ミロの美術館だ。丘を南東方向へしばらく下っていく。写真撮影は禁止だったが、これらの代表作を観た。

「すごいわね、これ、ミロが26歳の時に描いたのよ」国籍不明婦人がいきなり話しかけて来た。The Portrait of a Young Girl 1919
まごついて「農園と同じ頃?」と聞くと
「農園、何それ、知らない」スタスタ行ってしまった。...でもきっと同じ頃だよね。
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それからほどなく、ミロはこうなったんだから。The White Glove 1925
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 フニクラに乗って街へ戻り、カタルーニャ広場からダリ美術館(これは私設の寄せ集め館)を経由してホテルに帰る。そう言えば、忙し過ぎて、美術館カフェのサンドイッチとコーヒーしか口にしていない。
夜、友人たちとバルでタパスをつつきながらカバ(スペインの発泡酒)を飲んだら、すぐ酔いが回り早めに寝てしまった。

MOルート+α7.5km(年末バルセロナ&ローマ#4)2014/01/03

 せっかくグエル邸正面に滞在したのに、中を見学しないうちに移動日とは。いつものことだが、間抜けである。後ろ髪引かれつつ、Kさんと一緒にエル・プラット空港へ。ローマ・フィウミチーノ空港(レオナルド・ダ・ヴィンチ)へ飛び、2時半頃テルミニ駅近くのホテルでMさん母娘に合流した。この日、3人はローマ郊外のアウトレットへ行くことになっている。さあ、初ローマ街歩きに出発だ。

 K校の講師仲間に、ローマの達人MO先生がいらっしゃる。出発前、お薦め散策ルートをご提案下さった。数枚の印刷済みGoogle map持って、ホテルを出た。
 ところが、Roma Passを買うため散歩の前に立ち寄ったテルミニ駅で、観光案内所がなかなか見つからない。表示を見逃し、駅構内を無駄に2周した。何とか地味なブースに辿り着き購入できたが、つくづく間抜けである。

 テルミニ駅から北の共和国広場を通って、9月20日通りを左折、4つの噴水を通ってクイリナーレ通りに入る頃には日が暮れ始めた。噴水のひとつ↓
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ベルニーニのサンタンドレア・アル・クイリナーレ教会
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 公園を横切って、店の立ち並ぶナツィオナーレ通りを南西へブラブラ歩き、そのまま階段を降りたら、白い柱が現れた。賢帝トラヤヌスの記念柱は西暦113年築だそうだ。
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 ヴェネツィア広場を見渡し、フォーリ・インペリアリ方向へ折り返す。考えてみたら、この日も飛行機でクラッカーをかじっただけだ。カヴール通りを入ったところで、焼きたてのピザとジェラードを注文した。
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 そのまま北東へ直進すればテルニミ駅へ出るが、途中、ローマ最大の教会サンタ・マリア・マッジョーレの前で一休みした。すぐ横のスーパーでお土産のチョコレートを買い、もう隅々まで知っているテルミニ駅を斜めに突っ切ってホテルに戻った。
 MOルートに駅構内のグルグルを加えた距離を測ってみると、約7.5km。その数字に驚くが、次々に現れる遺跡・史跡に目を見張っているうちに、麗しのローマは歩けてしまうんですねえ。
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 一休み後の晩ご飯は、ショッピングから帰った友人たちに、以前K校で教えたスティーヴンが加わってくれてにぎやかだった。

ひた歩く3日間(年末バルセロナ&ローマ#5)2014/01/05

 24日からの3日間も、友人たちとまたは一人で、わき目はふってキョロキョロとひたすら街を歩きまわった。
 ローマには、世界中の国からそんな観光客が大勢集まってくるようだ。あちこちの街角で、地図を広げ通りの名前を確認している人々を見かけた。旅行サイトにはしばしば「危険がいっぱい」と警告が出ているけれど、常識的に用心しさえすれば問題はないように思う。
いつか再訪する日の参考として、散策した主な場所を記録しておこう

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24日
(オンライン予約済み)ヴァティカン博物館とシスティーナ礼拝堂、サンピエトロ広場サンタンジェロ城、ナヴォーナ広場、パンテオン、トレビの泉、スペイン階段
約7.5km

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25日 クリスマスのため博物館や美術館はお休み
共和国広場のサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ聖堂(ミケランジェロの設計)サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア聖堂(天使と悪魔」に登場したベルニーニ「聖テレーザの法悦」)、外からコロッセオ、カンピドーリオ広場、真実の口外からカラカラ浴場、チルコ・マッシモ、ベネツィア広場、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、テルミニ駅地下のスーパー
約10.7km、友人の万歩計では2万9千歩

26日 歩き過ぎたせい?この前夜から発熱 ∴地下鉄利用
ボルゲーゼ公園、国立近代美術館、ポポロ広場、コロッセオ

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27日おまけ 帰国日、午前中2時間あったので
ローマ国立博物館(マッシモ宮)

 歴史と文化の圧倒的な厚みを感じさせるローマ、特にヴァティカン博物館のラファエロとシスティーナ礼拝堂のミケランジェロには息をのんだ。偉大な人たちが偉大な仕事を遺し、後世のわたしたちがそれに深く感銘を受ける。旅行はいいものですね。

 そうそう、帰りのダ・ヴィンチ空港で、3年前K校会話クラスの学生だったグロリアさんに偶然会ったことを付け加えておきます。びっくり!! 世界は広い、でも時々狭い?

 やっぱり少し長くなってしまった年末旅行備忘録、これでおしまいです。
今年もどうぞよろしく。

ヴァティカンのメダルと芥川龍之介短篇2014/01/07

 旅先で目にしたものが、思いがけない方向に繋がっているものだ。

 数少ない買い物のひとつが、ヴァティカン博物館のショップにあったセント・クリストファーのペンダント・トップだ。
24日、ギフトショップのガラス棚を覗き込んだ時、幾列も並んだメダルの横に解説リストがあるのに気づいた。それぞれの聖者が象徴する意味なのか、motherhood, pain of love, etc.守り癒してくれる事柄が書かれているようだ。
St.Christopherは“traveler”
迷わず、一番小さいものを買い求めた。

 お正月明け、そのセント・クリストファーについて調べてみると、wikiのクリストフォロス解説が見つかった。そしてその中に、芥川の『きりしとほろ上人伝』という作品名が記されている。短篇は青空文庫から簡単に入手できた。

 子どもを背負い川を渡る「きりしとほろ」(クリストフォロス)のメダルが、これからは旅の意味深いお守りになりそうだ。

 ついでに書くと、travel songは数年前からJames Taylor One Man Band"のMy Traveling Starに決めている。
never asking why, never knowing when, every now and then, there you go again inspiring美しい曲です。

ヘミングウェイの妻たち2014/01/18

 リクエスト後数週間、図書館から『ヘミングウェイの妻』The Paris Wifeが回って来た。ちょうど昨晩からヘミングウェイとゲルホーン』(HBO制作テレビ映画)を見始めたところだ。
 いいタイミングのように思うが、「パリの妻」は4人の中の最初の妻ハドリーであり、ニコール・キッドマン演じるゲルホーンは3番目のマーサだ。

 ハドリーが語る若いヘミングウェイとのラブ・ストーリーは、ノンフィクションノヴェルという性格からか、原田マハ的に甘い。
 映画のほうも見せ場作りが優先し、キャパが「崩れ落ちる兵士」をパパ・ヘミングウェイやマーサと一緒の前線で撮影したりするので、ひっくり返って驚く。さらにパパは崩れ落ちた兵士を看取り、その銃を携えてベレー帽かぶったまま人民戦線の兵士に加わり、叫びながら走ったりするのだ。おまけに、それを見たマーサが銃弾飛び交う中を、ヘミングウェイの名呼びつつ追いかける。どわーっ。

 と、ちょっと無節操な作品ふたつだけど、読み終わった時、見終わった時には、それぞれの角度からのヘミングウェイがくっきり見えて来るのだろうとも思う。
モンティ・パイソンの秀才マイケル・ペイリンの"Hemingway Adventure"や、今村楯夫先生の『ヘミングウェイの流儀』など、どれを読んでも面白いのは、もちろんこの大作家の魅力によるものなのだ。

コルベア・ブッククラブのヘミングウェイ2014/01/26

 数日前、スティーブン・コルベアが何回あるのかよくわからない"ブッククラブ"シリーズの中で、ヘミングウェイを解説していた。

The Colbert Report
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 ふざけ過ぎだけど、文豪たちの存在が身近だからこそ、こうして何かにつけ語られるのだろう。日本も新しい作家だけでなく、芥川さん、夏目さん、太宰さん、三島さんなどもっと話題にするといいですよね。