クライトン先生2008/12/23

 11月にマイケル・クライトンが亡くなったことは、とても残念だった。『緊急の場合は』以来のファンだったし、何より私は彼を科学の先生として密かにあがめ奉っていたのだ。

 クライトンの小説のテーマは、言うまでもないことだが、常にその時代の最新サイエンス・トピックだった。そして、小説の中に必ず、そのトピックをきちんと解説してくれる部分があった。

 パラダイム・シフト、進化論や生命倫理、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、、ごく初歩的な範囲ではあるが、これらを理解できた(と思える)ことはうれしかった。

 90年代前半の『ディスクロージャー』で示されたコンピュータのヴァーチャル・リアリティ環境は、10数年後の今、既に現実のものとなっている。
 ものすごく頭がいいのにどこかほのぼのとした人柄を、エッセイ集『インナー・トラヴェルズ』で知ることができた。ここには映画『大列車強盗』に主演したショーン・コネリーのチャーミングなエピソードも書かれている。
 そして、これは理解できなかったが、ジュラシック・パーク各章の扉に書かれた「フラクタル曲線」や「カオス理論」の何とかっこよかったこと。
 ポストゲノム時代の進むべき方向を示した『ネクスト』も面白かった。

 クライトン先生、ありがとうございました。